【マルクス】資本主義経済の問題点とは?

こんにちは。本宮 貴大です。

 

「人間は生まれながらに自由で平等であるはずなのに、実社会は驚くほど不自由で不平等である。」

なぜ私達の社会は、不自由で不平等なのでしょうか。それは、私たちが資本主義社会に組み込まれているからです。

今回は、そんな資本主義社会の問題点について提起しながら、マルクスの思想についても学んでみたいと思います。

 

「資本家と労働者では、資本家の立場が強い。したがって、労働者は資本家から必ず搾取される。そんな資本主義経済はやがて滅びるであろう。」

これがマルクスの主張です。マルクスは、当時急成長していた資本主義経済について研究し、著書『資本論』の中で、その問題点を指摘しました。

マルクスが指摘する資本主義の主な問題点は以下の2つです。

・貧富の格差が大きいこと

・失業があること

 

 貧富の格差とは、資本家と労働者の所得の格差であり、巨額の富を得る一部の資本家階級(ブルジョワジー)に対し、わずかな賃金で過酷な労働を強いられる大多数の労働者階級(プロレタリアート)がありました。

 それまで国民の9割は農民であり、国王や領主からの重税にしばしば反発することはあっても、それぞれが自立し、素朴でゆったりとした生活を送っていました。

 しかし、18世紀のイギリスをはじめ産業革命が起こり、社会構造は大きく変わりました。大勢の人々が都市部に流れ込み、一つの作業場(工場)で働くようになったのです。封建社会から資本主義社会へと移行したのです。

 当時の資本主義社会は、資本の蓄積が不十分で、企業間の競争が激しかったため、資本家は、労働者を低賃金で長時間労働をさせていました。したがって、労働者の生活は現在では考えられないくらい過酷なものでした。労働時間は最低でも12時間が普通で、16~18時間になる時もありました。また、労働者の生活環境も劣悪で、ブタ小屋のように狭く、不衛生な住居に家族とともに住んでいる状態でした。医療制度は皆無で、様々な病気が蔓延していました。さらに、婦人や児童までも、より安価な賃金で労働に駆り出されていました。

 また、失業も大きな社会問題となっていました。資本主義経済には景気変動があります。不景気になると、労働者は抗力なく解雇されてしまう。かつてのような自立性を失った労働者が解雇されてしまうと、もはや生活の糧を得ることが出来なくなってしまいます。

このように18~19世紀の資本主義社会では、労働者の人間としての尊厳は配慮されていませんでした。

 

こうした状況を目の当たりにしたマルクスは彼らに同情し、「労働の4つ疎外」を発表しました。以下、4つを解説します。

1.生産物からの疎外

2.労働そのものからの疎外

3.類的存在からの疎外

4.人間の自己疎外

 まず、労働者が生産した物は、労働者の手には届かず、富裕層のもとに届いています(生産物の疎外)。また、労働そのものが資本家の私腹を肥やすためのものとってしまい、労働者は生きがいを感じにくい(労働そのものからの疎外)。さらに、工場での労働は効率性とチームワークが求められるため、足を引っ張る者が現れると、その者を排除しようとしたり、労働によるストレスから労働者同士が互いに罵り合ったり、いじめたりすることも起こりました(類的存在からの疎外)。そして、労働者は労働によって人間本来の自己を失っていく(人間の自己疎外)。

 マルクスは言いました。「本来、人間は労働を通じて生きがいを感じ、他者と豊かな関係を築き、自己実現していく存在である」と。

 しかし、当時の資本主義経済では、資本家にとって労働者は、土地、建物、機械設備などの生産手段のひとつに過ぎず、一方の労働者も、もはや労働は賃金を得るための手段にしかなっていませんでした。

 

 今回は、資本主義の問題点と、マルクスの思想について取り上げてみました。マルクスは19世紀の経済学者ですが、これは現代の日本でも同じことが言えるのではないでしょうか。仕事に就きたくても就けない失業者、低賃金で苦しい生活を強いられている若者、そんな社会に背を向ける働かないニート、そして過労死・・・・。2021年現在、資本主義経済は限界にきているのではないでしょうか。

 もちろん、現代の科学技術の発展と豊かな生活は、資本主義経済の恩恵でもあることを忘れてはなりません。(資本主義社会の矛盾)

 一方で、近年、こうした資本主義社会が独自の進化を遂げているという見方もあります。サラリーマンとして働くのではなく、フリーランスとして働き始めている人達がたくさん出てきたり、また、貯蓄から投資へと移行する人が増えたりと、その変化は肌で感じることが出来ます。

 つまり、資本主義経済の問題点が徐々に改善されて新たな社会構造へと変化していっているのです。そんな進化していく資本主義経済の中で、どう生きていくかを自らで考えるときに来ているのです。