【どう違う?】自由主義経済と資本主義経済

こんにちは。本宮 貴大です。

 

「資本主義とは、市民が自由な経済活動を行うこと」

これが資本主義の定義といえるでしょう。

しかし、資本主義とほぼ同意語で使われる自由主義との違いはあるのでしょうか。

今回は、それを解説していきたいと思います。

 

まず、資本主義という言葉ですが、実は蔑称だったということをご存じでしょうか。

資本主義という言葉を最初に使ったのは、19世紀のフランスの社会主義者であるルイ・ブラン(1811~1882)という人物です。

そう、資本主義という言葉は、社会主義者が自分達と敵対する経済体制のことを指す言葉として生まれたのです。それまで「資本」という言葉は存在したものの、具体的な経済体制を指す言葉として使われ始めたのは19世紀からと、かなり最近です。

一方で、「市民の自由な経済活動」は大変古い歴史を持っています。経済活動とは、例えば「にんじんを売って、その対価を貰う」という「商取引」のことですが、定義上の資本主義は、古代から世界各地で行われてきました。

 

やがて15世紀から「国家」が形づくられ、絶対王政の時代になると、国家は市民の経済活動に介入するようになり、特定の商人に市場の独占権を与えたり、新規参入を規制したりしました。

これに対し、17世紀以降、ヨーロッパ諸国で市民革命が起こりました。革命は成功し、個人の自由は国家や政府などの強制・拘束から守られることが約束されました。

実はこれが広義の意味での自由主義ですが、その権利の一つに経済活動の自由がありました。

「国家は不必要に経済活動に介入してはならない」

この原則は紛れもない現在の資本主義経済の根本原理ですが、本来の意味でいうなら、自由主義経済というのが妥当なところでしょう。

 

しかし、そんな自由主義経済の様相が17世紀以降、大きく変化していきます。それまで一人一人が個人事業主として、職人や商人がコツコツと生産活動と商取引をしていた時代から、1つの作業場(工場)に労働者を集め、道具や機械を使って商品を大量生産する時代になったのです。

17世紀初頭、ヨーロッパ諸国では工場制手工業(マニュファクチュア)が誕生し、経営者がお金(資本)を使って工場を建て、そこに集まった労働者(手工業者)が商品を生産するようになりました。1つの作業場で分業が出来るため、個人で作業をするよりも生産量は各段にアップしました。同時に、個人の事業主としての自立性は失われていきました。

さらに18世紀後半、イギリスをはじめ産業革命が起こり、紡績機や力織機が発明されると、工場に機械設備も導入され(工場制機械工業)、商品の生産力はさらにアップしました。

その結果、多くの利潤を手にする経営者と、安い賃金しか与えられない労働者に分かれ、明らかな所得格差と階級意識が生まれました。

 

資本である土地や建物、機械設備を整備するには、多くのお金が必要になります。そのため、株式会社や投資家という言葉も普及し、銀行や証券会社も次々に設立されていきました。つまり、資本というものがより大きな意味を持つようになったのです。

こうした自由主義経済の発展から生じる問題点を指摘したのが、社会主義共産主義者たちでした。

「それまで個人として事業を行ってきた市民の労働力が、一部の資本家によって、土地、建物、機械設備などの資本の一部として利用されるだけの存在となり、労働者は事実上、資本家の奴隷となっている。」

社会主義者たちは、こうした状況を批判と皮肉を込めて、「資本主義」と呼んだのです。

そのうえで、社会主義者たちは自らの思想を「資本に左右されない、平等な経済体制をつくる」と標榜したのです。

 

いかかでしたでしょうか。資本主義経済とは、自由主義経済が発展したものだったのです。もちろん、歴史的な事実として社会主義共産主義は成功しませんでした。かといって、資本主義にもデメリットはたくさんあります。「資本主義」という言葉は、そんなデメリットに対する皮肉を込めた言葉だったのです。