【荘子】自由に生きる方法とは?

こんにちは。本宮 貴大です。

「自由に生きる」

近年、かなり注目されている価値観です。

今回は中国の思想家である荘子の思想を見ていきながら、自由に生きる方法について考察してみたいと思います。

 

昔、荘子は夢をみました。それは自分が胡蝶になって自由に飛び回っている夢です。にわかに目が覚めた荘子は思いました。

「私が胡蝶になった夢を見ていたのか、それとも胡蝶が私になる夢を見ているのか」

今、私達は、人生という壮大な夢を見ているのかも知れない。そして死んだ後、全てが夢であったことを知るのではないか。

しかし、荘子が言いたかったのは、SF映画のような世界観ではなく、日常生活が真実で、夢の中はまぼろし、という固定化された常識を疑ってみよということです。

この常識を疑うことが自由に生きるための最初の一歩といえるのではないでしょうか。

 

私自身の話ですが、幼少期に世界地図を書くのが好きでした。

まず、大陸を描き、次に線を引いて国境をつくり、そして国別に色を塗って完成です。それを見て、私は思いました。

「でも、世界って、こんなにカラフルなはずはないよね。」

当然ですが、人工衛星から大陸を見ても、国境線は見えず、色分けもされていません。それらは一部の人間が勝手に決めたものであって、地球そのものは、みんなの共有財産です。

人間は、差別や色分けが大好きです。

富裕層と貧困層、高学歴と低学歴、正規社員と非正規社員、美しいと醜い、うまいとまずい、などなど・・・・。

これらは私達が当たり前のように使っている言葉ですが、全て人間が考えた価値観でしかありません。荘子は、こうした価値観は無意味でくだらないものだと指摘しました。

荘子は、この世にある全てのものに価値があるとしています。例えば「益虫」と「害虫」はどのような基準で決められているでしょうか。もちろん人間にとって有益か、害悪か、で決められています。しかし、本来そんなものはないのです。自然界に「害」などなく、全て価値あるものとして存在しているのです。

 

荘子は、このような人間が決めた価値観や常識を取り去らって物事を判断することが出来れば、自由に生きることが出来るとしました。逆にいうと、人間の価値観や常識に

偏差値の高い大学に入ることが幸せになれる。

大手企業に就職すれば幸せになれる。

公務員になれば安定した将来が約束される。

果たして本当にそうでしょうか。そうした常識も疑ってみる必要があります。

 

自ら其の適を適とする。(『荘子』大宗師篇)

これは、自分が心の底から快適だと思ったことが本当の快適さだ、という意味です。もちろん、みんなが決めた価値観に乗っかるほうが、色々と得することはあります。賞賛を得ることも出来るでしょう。

ですが、あなた自身は幸せでしょうか。

例えば公務員に就職できたとしても、残業続きで、心身ともに疲弊したり、人間関係で苦労したりするかもしれません。そうなれば、幸せと言えるのでしょうか。幸福とは、外から与えられるものではなく、本人の内側から湧き上がってくる感情なのです。

数十年後になって、自分の人生はこれで良かったのか、と後悔してしまうかもしれません。

 

尾を塗中に曳かん。(『荘子』秋水篇)

ある日、荘子が釣りをしていた時のことです。楚の国王から派遣された2人の家老が荘子を訪ねてきました。

「あなたは大変知恵ある者と聞いてやってきました。是非とも我が国の政治顧問となってくださいませんか。」

荘子は振り返ることもせず、質問しました。

「楚の国には、年齢3千年くらいの亀がいると聞いている。国王はその亀を家宝として大事に納めているそうだが、亀は甲羅だけにされて納められることを喜んだでしょうか、それとも、生きながらえて、尾を土の中に曳くこと望んだでしょうか。」

2人の家老は互いに目を合わせてから答えました。

「そりゃ、亀は土の中に帰ることを望んでいたことでしょう。」

これを聞いた荘子は答えました。

「お引き取り願います。私もその亀のように尾を土の中に帰って、自由に生きたいのです。」

私達は、国家や会社から与えられる地位や名誉、富などを優先するがゆえに、自分の感情を無視していないでしょうか。地位や名誉など人間の決めた価値観にこだわるほど、自由からは遠のいていきます。

もちろん、働くことは大事ですし、日々の生活の糧を得なければなりません。ですが、それはあなたの心が自由であってこそ、日々の業務や生活が安定するのではないでしょうか。

他人のための人生を送る必要はありません。自分のための人生を送ることを考えてください。それこそが自由に生きることなのです。