【ゾロアスター教】なぜ最初の世界宗教となれたのか
こんにちは。本宮 貴大です。
ゾロアスター教は、世界宗教の中では最も古い歴史を持っているとされています。世界宗教とは、国や地域を超えて、多くの人に広く信仰されている宗教のことですが、その元祖となったのがゾロアスター教です。なので、後に誕生するユダヤ教やキリスト教、イスラームなどの世界宗教に強い影響を与えています。
ゾロアスター教の特徴の1つに善悪二元論というのがあります。この二元論の世界観は非常にわかりやすいです。二元論とは、いわゆる「2つが1つ」というモデルで、2つの勢力が1つの世界に存在し、互いに争っている状態のことを指します。ゾロアスター教では、この世界は善神アフラ・マズダと、邪悪な神々の2大勢力が戦う場所であるとしており、人間は善神の側について戦うことが義務づけられている。
これが例えば「3つが1つ」の場合はどうなったでしょうか。三つ巴の状態だと、決着が着きにくいし、人間はどの勢力に味方すればよいのかわからない。結局は、3つの勢力のうちの2つの勢力が手を組んで戦うという二元論の世界になってしまうのではないでしょうか。人間の認識能力は意外と低く、対象が3つ以上になると、途端にわかりにくくなってしまうのではないでしょうか。
一方で、キリスト教には三位一体説がありますが、これは「1つが3つ」であり、もともとは一つの対象物であったものを3つの存在に分類しているだけなので、そうでもない。
また、マトリックス法は「1つが4つ」であることをわかりやすく説明する方法で、2つの異なった対立概念を縦軸と横軸に分けており、結局は二元論が‘大もと‘になっているのです。
また、ゾロアスター教の二元論は善神と悪神を、光と闇、または生命と死の象徴として概念化している。これもわかりやすい。「闇」があるから「光」の有難さが分かるのであり、親しい人の「死」を目の当たりにすることで、「生きる」ということを再考することが出来る。善神アフラ・マズダは光の神であり、この世界を天空・水・大地・植物・動物・人・火の順で創られた創造神でもあります。対する悪の神々は、闇の住人達で、この世界に災いをもたらし、全ての生物を死に追いやってしまう。
ゾロアスター教は他にも終末思想と救世主思想があります。これも強い求心力を持っています。終末思想というのは、とにかく流行るのです。特に災害や疫病が頻発し、犯〇や汚職などの政治的な混乱が生じている時代には。現代でも、ノストラダムスの大予言とか、直近ではマヤ文明の暦が2012年12月で終わっているとして、世界の終わりが騒がれましたけど。
現代でさえ大きな注目を集めたのだから、当時のような宗教が世界を支配しているような時代では、人々は盲目的に信じてしまったことでしょう。
ゾロアスター教では、善意・善語・善行の3つ徳を積んでいけば、世界の終わりに救世主が現れて、善神が勝つとされています。そのとき、人々には最後の審判が下り、天国か地獄のどちらかへ行くとされた。
このようにゾロアスター教の思想は、後世の宗教に強い影響を及ぼしていることがわかります。
そして、ゾロアスター教はアフラ・マズダを唯一神とした一神教でもあります。多神教が主流だった当時で、なぜゾロアスター教は一神教として誕生したのでしょう。
それはユーラシア大陸の地政学的な情勢が関係していると思います。現在もそうですが、ユーラシア大陸には様々な民族が住んでおり、同時に砂漠や高山など厳しい環境も広く存在しています。日本のような単一民族が豊かな自然環境に恵まれて生活しているのとはわけが違う。
そんな状況の中で、都市化が進み、人口が増えてくると、やがて肥沃な土地の奪い合いが始まります。そんなときは、1つの神を信仰させることで、出来るだけ多くの民族を団結させる方が良いに決まっています。そして、争いに負けた場合は、他の豊かな土地を求めて移動するわけですが、一神教であれば、その団結力が弱まることは少ない。
このように一神教は、戦う民族や移動の民族が生み出した特有の宗教です。彼らは多神教の世界のような山や川、野原や森などの自然を信仰の対象とはせず、太陽や月などの唯一のものを信仰のシンボルとしているのも、そのためではないでしょうか。ゾロアスター教はそんな時代の変化によって誕生した宗教だったのではないでしょうか。